栗田式速読法中級クラスを受講した160人の心身機能の変化

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 以下は、2003年3月に、国際精神情報科学会にて報告された研究内容です。
 最初は、要旨を示し、その後で、具体的な解説をしています。
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0.要旨
栗田式速読法は1987年に提唱され、1991年から一貫した内容の指導が始まった。以来、2002年までに405クラスが終了し、1万3千人以上の受講生の詳細なデータが蓄積されて来た。心身相関を活用して、文字情報の従来の入力・処理・出力を、「分散入力、並列処理、統合出力」と呼ぶ新方式にパラダイムシフトさせるのがその訓練方法の要点である。本研究では、週1回、五週間の中級速読法の講習を通じて知的機能を含む心身の機能がどのように改善されたかを調べた。対象は2001〜2002年に、5週間に5日間かけて行われた4クラスの成人参加者160人である。読書速度の初級での初速は916字/分、中級での初速は平均6886字/分であったが、最後は平均56991字/分となった。初級初速を基準とした読書倍率は平均63.7倍、中級初速を基準にした読書倍率は11.3倍になった。計算速度(1分間にできる一桁加算の個数。作業効率の指標)は平均98点から114点となり、平均17%の効率アップを示した。迷路抜け速度(20秒間に抜ける単位迷路の個数。認知力の指標)は平均21点から36点になり、1.7倍となった。身体の元気度の指標、および指回し運動の敏捷性と巧緻性も改善した。5週間という短期間におけるこの成果は、周辺視野から潜在意識への経路を活性化し、情報処理の新しいパスウエイを確立して知的活動度を高めることで生じた。本研究の結果から、栗田式初級速読法に続けて中級速読法の訓練を行うことで、一般成人においてさらに著明な能力上の変化が生ずることが示された。
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  1.序論・・・栗田式速読法の要約
 栗田式速読法は1987年に提唱されました。
 このシステムは知的機能の改善と人間の情報処理のパラダイムの変革を目指します。
訓練の目的は文字に対する情報処理の従来のパラダイムを、「分散入力、並列処理、統合出力」と呼ぶ新方式にシフトさせることです。
 訓練の要点は、心身相関を独自な方式で活用し、周辺視野から潜在意識への経路を活性化し、情報処理の新しい道筋を確立し、知的機能を改善することです。
 講習の受講者は言語系、心象・感覚系(以下、略して心象系)、感情系、自律系、運動系、代謝・潜在系(以下、略して潜在系)の六領域を高める訓練を実践します。
 具体的には、受講者は上述した六つのシステムを一連の独自の方法で刺激して、感覚の閾値を下げ、知的情報処理機構の再編成と加速とを促す一連の訓練を実践します。
 その結果、知的情報処理機能が総合的に向上し、心と体のさまざまな側面が活性化し、読書速度も加速されます。
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  2.中級クラスの説明
 1991年からは、初級、中級、上級の各クラスに関して、一貫した内容の速読法の指導が始まった。初級クラスには期間が異なる3種類があり、どのクラスも10ステップからなる同一内容をマスターします。1991年10月から2003年3月までに合計409クラスが終了し、1万3千人以上の生徒の詳細なデータが蓄積されて来ました。
 これとは別に4万人以上が通信教育で初級から上級までの内容を学んできました。
 どのクラスも、最初に測定した読書速度の10倍以上の速さになりました。
 中級は初級を修了した者が受講できます。
 中級クラスも、初級と同様に、3種類のクラスがあります。具体的には、中級通常クラス、中級集中クラス、2日間中級クラスがあります。
 最近の5年間は5回で学ぶ中級集中クラスが一番多く開催されています。
 本研究では5日間で学ぶ「中級集中クラス」の訓練を通じて生じた変化を調べました。
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   3.研究の対象と方法
 ここでは「研究の対象と方法」を述べます。
 本研究では、2001〜2002年に行われた栗田式速読法の4つの中級クラスに参加した160人の成人のデータを検討しました。
 この講習では、栗田式速読法の中級クラスの10ステップからなる内容が、2セッションづつに分割され、5日間で教えられました。
 訓練は毎回9時から19時まで行われました。
 実質的な訓練時間は合計約50時間でした。
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   4.測定項目の説明
 ここでは、知的機能として、(1)読書速度、(2)読書倍率、(3)迷路抜け速度、(4)計算速度、という四項目が測定されました。
 (1)「読書速度」とは1分間に読んだ文字数を示します。
 訓練の前の読書速度を特に読書の「初期速度」(または初速度)と呼びます。
 (2)「読書倍率」は訓練の後の読書速度と訓練の前の読書速度(すなわち初期速度)との比率を示します。
 (3)「迷路抜け速度」とは20秒以内に抜けることができた単位ブロックの個数を示します。これは認知能力の指標と考えられます。
 与えられた迷路は異なる単位ブロックを連結することで作られたものです。
 (4)「計算速度」とは60秒間に答えを書くことが出来た計算の個数を示します。
 与えられた計算は一桁の足し算です。これは作業効率の指標と考えられます。
  以下の諸項目も測定されました。 
 測定M1)では、栗田が提唱した「指回し運動」の速度を調べました。
 これは左右の手の対応する指の指先を合わせて丸いドーム状の形を作り、対になった指同士を、お互いの回りを30秒間で回す回数です。これは親指から小指まで測定します。この値は敏捷性の指標とみなされます。
 測定M2)では、中指と薬指を、指回し運動として「互いに触れ合わないで」 回せる回数を調べました。このとき最高値を50回までとします(この値は巧緻性の指標とみなされます)。
 測定M3)では、「元気さの主観的な指標」を調べました。
 これは先ほど述べた六つのシステム、すなわち、言語系、心象系、感情系、自律系、運動系、潜在系のそれぞれについて、1点から10点までで元気さ・好調さの度合いを表現したものです。合計した値を「元気度」と呼びます。
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5.「迷路抜け速度」の結果
 以下、諸結果を示します(以下に示す初級の結果は、1550人の平均値を示します)。
 まず、以下の2つのグラフには迷路抜け速度を示しました。
 上段の図5aは、初級での平均値をセッション毎に示した結果です。
 初級では最初は7点だったのが、最後には21個になります。
 下段の図5bは、今回調べた中級での結果です。
 中級の平均値は21点から36点になり、1.7倍になりました。
 この結果は、まず第一に、初級の最後のレベルが、中級が始まるまでの間、維持されていたことも示しています。第二に、初級での結果が上の限界を示してはおらず、さらに順調に伸びたことも示しています。 

図5a 迷路抜け速度の平均値の推移(初級)
横軸はセッションを示し、
縦軸は20秒間に抜けた迷路の個数を示す。
迷路抜け個数

図5b 迷路抜け速度の平均値の推移(中級)
横軸は中級の初回と最終回を示す。
縦軸は20秒間に抜けた迷路の個数を示す。
迷路抜け個数


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6.「計算速度」の結果
 以下の2つのグラフには「計算速度」の結果を示しました。
 下の図6aのグラフは初級での計算速度、すなわち、一分間にできる一桁加算の個数ををセッション毎に示したものです。
 計算速度の初期値の平均値は71個であり、最終的な計算速度の平均値は101個でした。平均値の倍率は1.42倍でした。これは作業効率が平均で42%改善したことを示します。
 これに対して、下の図6bでは中級での結果を示します。
 中級での計算速度は平均98点から始まって114点になりました。
 中級の前後で、さらに平均17%の効率アップを示したことになります。
 これからやはり、迷路と同様に二つのことが分かります。
 第一に、初級の最後のレベルが、中級が始まるまでの間、維持されていたことを示し、
 第二に、初級での結果が上の限界を示してはおらず、さらに順調に伸びたことも示しています。 

図6a 計算速度の平均値の推移(初級)
横軸はセッションを示し、
縦軸は60秒間に出来た一桁加算の個数を示す。
計算個数

図6b 計算速度の平均値の推移(中級)
計算速度の平均値の推移
横軸は中級の初回と最終回を示し、
縦軸は60秒間に出来た一桁加算の個数を示す。


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7.「読書速度」の結果
 以下の2つのグラフには「読書速度」の結果を示しました。
 上の図7aのグラフでは、初級での読書速度と読書速度を、セッション毎に示しました。
 読書速度は、初速度は平均870字/分で、最終的な読書速度の平均値は22959字/分となりました。
 最終的な読書倍率の平均値は26倍でした。
 以上は1550人をまとめた結果です。
 下の図7bは中級での結果を示しました。
 中級では、訓練前は平均6886字/分で始まり、最後は平均56991字/分となりました。
 この人たちの初速度を振り返ると、平均916字の集団でした。
 そこで、初級の初めから計算すると平均で63.7倍、中級の初めから見ると平均で11.3倍となりました。
 すなわち、中級でも10倍突破したことになります。

図7a 読書速度と読書倍率の推移(初級)
横軸はセッションを示す。
左の縦軸は1分間の読書字数の平均値を示す。
右の縦軸は読書倍率を示す。
読書字数グラフ

図7b 読書速度と読書倍率の推移(中級)
横軸は中級の初回と中級の最後のセッションを示す。
左の縦軸は1分間の読書字数の平均値を示す。
右の縦軸は読書倍率を示す。
初級の初めから計算すると平均で63.7倍、
中級の初めから見ると平均で11.3倍となった。
読書速度の変化

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8.「読書倍率の分布」の結果
 上の図のグラフでは、初級での読書倍率の分布を示しました。
 初級クラスでは、97%の人が10倍を超えたことが分かります。
 下の図は中級での結果を示したもので、65%が50倍を超えました。

図8a 読書倍率の分布(初級)
初級では97.3%の人が10倍を超えた。
読書倍率の分布

図8b 読書倍率の分布(中級)
中級では65%の人が50倍を超えた。
読書倍率の分布

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9.「指回し運動の速度」の結果
 以下、方法で述べたM1、M2、M3の測定値を示します。
 ここでは、指回し運動の速度の推移を示します。
 親指から小指までを順番に1指、・・・、5指と呼びます。
 上段の図9aの結果は、初級の一泊研修の値です。
 灰色の棒グラフは訓練前の値、黒い棒グラフは訓練後の値を示しています。
 このうち、一番速い2指と一番遅い4指に注目しましょう。
 2指に対する値は、82から103に増加し、約1.26倍になっています。
 4指に対する値は、46から62に増加し、1.35倍になっています。
 この結果は、運動系の敏捷性が高まったことを示します。
下の図9bは中級の結果ですが、初級よりはるかに敏捷になったことが分かります。
 具体的には、(1指,2指,3指,4指,5指)が(116,118,104,88,100)から(134,138,132,100,115)に増加しました。

  図9a 初級での指回し運動の速度の変化(30秒間にできる指回し運動の回数)
  (1指,2指,3指,4指,5指) 敏捷性の尺度を示す。
  = (71, 82, 66, 46, 68)
  → (102, 103, 84, 62, 83).
 増加%(44% 26% 27% 35% 22%)
指回しの変化

  図9b 中級での指回し運動の速度の変化(30秒間にできる指回し運動の回数)
  (1指,2指,3指,4指,5指) 敏捷性の尺度を示す。
= (116, 118, 104, 88, 100)
→ (134, 138, 132, 100, 116).
指回し運動の変化

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 10.「触れ合わないで回す指回し運動の速度」の結果
 ここでは、中指と薬指に対する「触れ合わないで回す」指回しの回数を示します。
 上の図10aは、初級速読法の一泊研修での変化を示しました。
 中指に対する値は、20.9から28.9に増加し、約1.38倍になりました。
 薬指に対する値は、7.8から12.2に増加し、1.56倍になりました。
 中級では、中指に対する値は、36から46に増加し、中級だけで約1.5倍になりました。
 薬指に対する値は、24から36に増加し、これも中級だけで1.5倍になりました。
 この結果は、運動系の巧緻性が初級のときよりもさらに高まったことを示します。

図10a    触れ合わないで回す指回し運動の回数(初級)
   (中指, 薬指) = (20.9, 7.8)→(28.9, 12.2)と増加.
   巧緻性の尺度を示す。
指回しの巧緻性の変化

図10b 触れ合わないで回す指回し運動の回数(中級)
(中指, 薬指) = (36,24)→(46, 36)と増加.
   初級よりも巧緻性がさらに高まったことを示す。
指回しの巧緻性の変化

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11.「6つのシステムの元気度」の結果
 ここでは、6つのシステムの元気度・好調度の値の変化を示します。
 上段の図11aは、初級での元気度・好調度の値の変化を示します。
 この図は、好調度が合計34.1点から合計46.5点まで増加したことを示します。
 その増加は36.4%でした。
 下段の図11bは中級での結果を示します。
 この図は、中級でも好調度が合計37.2点から合計47.2点まで増加したことを示します。

図11a 六つのシステムの元気度(好調度)の変化(初級)
  (言語系, 心象系, 感情系, 自律系, 運動系, 潜在系)
 = ( 4.9, 6.3, 5.9, 6.1,   5.5, 5.4)
 →( 7.6, 8.0, 8.0, 7.8, 7.5, 7.6).
初級では合計34.1から46.5になった(36.4%上昇)。
元気度の変化グラフ

図11b 六つのシステムの元気度(好調度)の変化(初級)
  (言語系, 心象系, 感情系, 自律系, 運動系, 潜在系)
 = ( 6.1, 6.5, 6.3, 6.2,   6.1, 6.3)
 →( 7.8, 7.9, 8.1, 7.8, 7.8, 7.9).
中級では合計37.2から47.2になった(26.9%上昇)。
元気度の変化のグラフ

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12.考察とまとめ
 以下、考察とまとめを示します。
 健康成人の三種の知的機能が、短期間のSRS中級速読法の訓練でどの程度向上するかについて、具体的なデータと興味深い知見が得られました。
 得られた諸結果は初級クラスの成果をさらに延長する成果となりました。
 本研究の結果から、一般成人においてこのような知的効率の著明な変化を引き起こすことが普遍的に可能であることが示唆されました。
 訓練の過程で測定された種々の主観的・客観的データを総合的に判断すると、知的機能を短期間で高める鍵は以下の2点に存在すると考えられました:
 (1)心身を総合的にレベルアップする訓練の実践。
 (2)周辺視野を用いた従来とは異なる認知機構の構築。
 上記の諸結果では、運動系の敏捷性・巧緻性の改善が生じることと、心身全体の元気度が高まることも示されました。
 すなわち、この方法は、健康を高める方法としての意義も有します。
本研究の方法によれば、その成果は5日間という非常に短期間で達成できます。
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13.SRSは集合力で能力を進化させる
 SRSは6つの領域を総合的に訓練することによって、情報処理を飛躍的に変革するシステムです。その際に働く力はさまざまな能力の「集合力」としてとらえることができます。 これが可能になる背景は、地球上の生命体が進化の道筋で準備して来たさまざまな能力になります。SRSはそれらを総合的に活性化し、それを一気に統合する革新的な技術体系であると言えます。
 【付記】 以上の内容は、以下の論文に掲載されています。
"Change in the intellectual and physiological functions of 160 persons
who studied in the intermediate class of Kurita's speed reading course"
  M. Kurita
  Journal of International Society of Life Information Sciences,
vol.21(1), 2003, 290-292.
 
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