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 以下、10回で行う速読初級講習の成果に関して、最近まとめた結果を示そう。
 [要旨]
 栗田式速読法は1987年に提唱され、1991年から一貫した内容の指導が始まった。 以来、2002年7月までに394クラスが終了し、1万2千人以上の生徒の詳細なデータが蓄積されて来た。心身相関を活用して、文字情報の従来の入力・処理・出力を、「分散入力、並列処理、統合出力」と呼ぶ新方式にパラダイムシフトさせるのがその訓練方法の要点である。
 本研究では、10日間の研修を通じて知的機能を含む心身の機能がどのように改善されたかを調べた。対象は、1995年から2002年まで10週間に10日間かけて行われた22クラスの参加者で、合計1550人の成人である。
 読書速度は平均870字/分から平均22959字/分で平均26倍になった。
 計算速度(1分間にできる一桁加算の個数。作業効率の指標)は平均71点から101点となり、平均42%の効率アップを示した。
 迷路抜け速度(20秒間に抜けることができる単位迷路の個。認知力の指標数)は平均7点から21点になり、3.0倍となった。
 身体の元気度の改善も生じた。10週間という短期間におけるこの成果は、周辺視野から潜在意識への経路を活性化し、情報処理の新しいパスウエイを確立して知的活動度を高めることで生じたものである。本研究の結果から、一般成人においてこのような著明な変化を引き起こすことが普遍的に可能であることが示唆された。
 
1.序論
 栗田式速読法およびそれを一部として含むSRS能力開発法は1987年に提唱された。
 このシステムは知的機能の改善と人間の情報処理のパラダイムの変革を目指す。
 訓練の目的は文字に対する情報処理の従来のパラダイムを、「分散入力、並列処理、統合出力」と呼ぶ新方式にシフトさせることである。
 訓練の要点は、心身相関を独自な方式で活用し、周辺視野から潜在意識への経路を活性化し、情報処理の新しい道筋を確立し、知的機能を改善することである。
 講習の受講者は言語系、心象・感覚系(以下、略して心象系)、感情系、自律系、運動系、代謝・潜在系(以下、略して潜在系)の六領域を高める訓練を実践する。
 具体的には、受講者は上述した六つのシステムを一連の独自の方法で刺激して、感覚の閾値を下げ、知的情報処理機構の再編成と加速とを促す一連の訓練を実践する。
 その結果、知的情報処理機能が総合的に向上し、心と体のさまざまな側面が活性化し、読書速度も加速される。
 1991年からは、初級クラス、中級クラス、上級クラスのそれぞれに関して、一貫した内容の速読法の教育が始まった。
 初級クラスには以下の3種類がある。
 初級通常クラスでは、生徒は毎週1回、1ステップずつの内容をマスターしながら、10週間をかけて訓練をする。初級集中クラスでは、生徒は毎週1回、2ステップずつの内容をマスターしながら、5週間をかけて訓練をする。2日間で行う初級クラスでは、生徒は2日間をかけた訓練を行って、10ステップの内容をマスターする。 
 生徒たちは参加するクラスの種類に関わらず10ステップからなる同一内容をマスターする。
 1991年10月から2002年7月までの間に、合計394クラスが終了した。1万2千人以上の生徒の詳細なデータが蓄積されて来た。これらの人とは別に、3万人以上が通信教育で初級から上級までの内容を学んできた。
 本研究では、10週間で行う初級通常クラスを通じて知的機能がどのように改善されたかを調べた。
 
2.研究の対象と方法
 1995年から2002年の1月まで、東京にて10週間の初級通常クラスが全く同じ曜日(木曜日)の夜に同一プログラムで計22回開催された。
 この講習では、栗田式速読法の初級クラスの10ステップからなる内容が10日間で教えられた。
 今回の研究の対象は、22クラスの参加者である合計1550名の成人である(ただし、読書速度の解析は全回出席者に限ったため1122人のデータを用いた。それ以外は、参加者全員の変化を示す)。
 @読書速度、A読書倍率、B迷路抜け速度、C計算速度、という四項目が測定された。
 ここで、読書速度とは1分間に読んだ文字数を示す。訓練の前の読書速度を特に読書の初期速度と呼ぶ。読書倍率は訓練の後の読書速度と訓練の前の読書速度(すなわち初期速度)との比率を示す。迷路抜け速度とは20秒以内に抜けることができた単位ブロックの個数を示す。これは認知能力の指標である。与えられた迷路は異なる単位ブロックを連結することで作られたものである。計算速度とは60秒間に答えを書くことが出来た計算の個数を示す。これは作業効率の指標である。与えられた計算は一桁の加算である。
 2000年9月のクラスに関しては、元気さの主観的な指標も測定された(対象の人数は合計72名である)。これは言語系、心象系、感情系、自律系、運動系、潜在系のそれぞれについて、1点から10点までで元気さ・好調さの度合いを表現したものである。合計した値を元気度と呼ぶ。
3.結果
図1、2、3にはそれぞれ、迷路抜け速度、計算速度、読書速度および読書倍率をステップ毎にグラフで示した。
 迷路抜け推移グラフ
 
図. 1 迷路抜け速度の平均値の推移
  横軸はステップを示し、縦軸は20秒間に
  抜けた迷路の個数を示す。7個→21個と3倍に増加した。
図1に示すように、迷路抜けの初期値の平均値は7.1個であり、最終的な迷路抜け速度の平均値は21.0個だった。平均値の倍率は3.0倍だった。これは認知能力が著明に進歩したことを示す。



計算推移グラフ
 
図. 2 計算速度の平均値の推移
 横軸はステップを示し、縦軸は60秒間に
 出来た一桁加算の個数を示す。
 平均は71個→101個と増加した。
 平均の比率は42%の増加を示す。
図2に示すように、計算速度の初期値の平均値は71個であり、最終的な計算速度の平均値は101個だった。平均値の倍率は1.42倍だった。これは作業効率が平均で42%改善したことを示す。




読書速度推移グラフ
 
 ステップ    S0    S1    S2   S3   S4     S5    S6    S7     S8    S9     S10 
 読書速度   870  1678   2135  3184  3710   4620   5336  6861    10451  12647   22959
 倍率   ―       1.9    2.5   3.7   4.3     5.3    6.1   7.9    12.0   14.5    26.4
図. 3読書速度と読書倍率の推移 
 横軸はセッションを示す。
 左の縦軸は1分間の読書字数の平均値を示す。
 右の縦軸は読書倍率を示す。
 表はそれらの値を示す。N=1122(人)。
図3に示すように、読書の初速度の平均値は870字/分で、最終的な読書速度の平均値は22959字/分となった。最終的な読書倍率の平均値は26倍だった。



読書速度倍率グラフ
  
Fig. 4読書の最終倍率の分布    
  8倍以上とあるのは、[8,9)倍、すなわち8倍以上かつ9倍未満と なった人の割合を示す。他の倍率も同様。
  ただし、5倍未満と10倍以上は、文字通りの意味である。
  5倍以下は0.3%、[5,6)は0.1%、[6,7)は0.4%、
 [7,8)は0.3%、[8,9)は0.5%、[9,10)は1.1%。
 10倍突破したのは97.3%の人であった。N=1122(人)。
図4は、最終的な読書倍率の分布を示す。ここで、[n,m)という記号はn倍以上m倍未満の人を示す。図4は、読書速度に関して、受講者の97.3%が10倍以上を達成したことを示している。




元気度の変化グラフ
  
図. 5 六つのシステムの元気度(好調度)の変化
 72人の平均値(と標準偏差)を示す。
 各システムは10点満点で自己評価をした。
 合計は34.1点(訓練前)から46.5点(訓練後)
 になった。
 Lは言語系、Iは心象系、Eは感情系、Aは自律系、
 Mは運動系、Sは潜在系を示す。
 各システムで左側が訓練前、右側が訓練後。
図5は、元気度の値を示す。この図は、元気度が合計34.1点から合計46.5点まで増加したことを示す。その増加は36%である。
 
4.考察
 健康成人の三種の知的機能が短期間の訓練でどの程度向上するかについて、具体的なデータと興味深い知見が得られた。
 本研究の結果から、栗田式速読法の指導を通じて、一般成人においてこのような著明な変化を引き起こすことが普遍的に可能であることが示唆された。
 訓練の過程で測定された種々の主観的・客観的データを総合的に判断すると、知的機能を短期間で高める鍵は以下の2点に存在すると考えられた。
@心身を総合的にレベルアップする訓練の実践。
A周辺視野を用いた従来とは異なる認知機構の構築。
 上記の結果では、心身全体の元気度が高まることも示された。すなわち、この方法は、健康を高める方法としての意義を有する。本研究の方法によれば、その成果は週1回、10週間という短期間の栗田式速読法の訓練で達成できる。
 
[参考文献]
1) 栗田昌裕:システム速読法. 角川書店,1988.
2) 栗田昌裕:人生を拓くSRS速読法. 文藝春秋社,1989.
3) 栗田昌裕:栗田式SUPER READING SYSTEM. 日本潜在脳開発研究所,1989
4) 栗田昌裕:栗田博士の速読法であなたの能力は全開する. KKロングセラーズ, 1993.
5) 栗田昌裕:心身の六領域を活性化する知的創造性活性化訓練(スーパー・リーディング・システム)の提案とその成果. 未来・創造世界会議[第二分科会 創造,イノベーション]国際学会論文集, 27-53,1997.
6) 栗田昌裕:奇跡を呼ぶ速読法.PHP研究所, 1997.
7) 栗田昌裕:知力を高める驚異の共鳴速読法. 廣済堂, 1998.
8) 栗田昌裕:奇跡を呼ぶ指回し体操.廣済堂, 1992. 等。 
付記:この結果は、2002年8月26日に、
Human PSI Forum("Human Potential Science International Forum
---Physical and Physiological Approach)
[潜在能力の科学]国際フォーラム---物理・生理学的アプローチ
にて発表される。
 
  
 

 
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