反応不良症候群の特徴とは

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 以上のように栗田式速読法では、大半の人が10倍を超えるので、最終的に10倍を越えるか越えないかの心理的な差(達成感、満足感)は少なくない。
 このようなデータを踏まえて、最終回に5倍を越えられなかった人を、訓練に対する反応が不十分であるという意味で、「反応不良症候群」と呼ぶことにしている。
 その割合は先に示したように通常クラスでは欠席者を含めると約2%、全回出席者を含めると0.4%である(一泊研修では3%)。人数が少ないので、問題にするに足らないという考え方もあり得るが、実はこの人たちには以下のような一連の顕著な特徴が見られる点が興味深く、他の人々にも参考になる要素があるために、注目に値する。
 @イメージ力が非常に弱く、視覚的なイメージがほとんど浮かばない(心象系の特徴)。
 A指が器用に動かない上に、敏捷に動かすことができない(末梢の運動系の特徴)。
 B眼球を速く動かすことができない(脳幹の関与する運動系の特徴)。
 C皮膚感覚が鈍感である(感覚系の特徴)。
 D身体や内臓のさまざまな反射が弱く、あっても自覚に乏しい(自律系の特徴)。
 E感動が乏しく、書かれた感想文も否定的な表現が多い(感情系の特徴)。
 F夢を覚えていないことが多く、夢に色がつかない(潜在系の特徴)。
 G自分の考えが文章表現できず、感想文をごくわずかしか書かない(言語系の特徴)。
 H人の話を聞いていないことが多く、記入ミスが非常に多い(注意力、集中力の欠如)。
 I迷路抜けの速度や計算速度が非常に遅い(認知機能、知的作業効率の低下)。
 ここに列記された内容を見ると、「いわゆる『頭が悪い』ということにすぎないではないか」と思われる読者もおられると思うが、それはとらえ方が浅い。
 G、H、Iだけであればいわゆる「頭が悪い」状態と言ってすませることができるが、A、B、Cのように、運動系や感覚系をも巻き込んで、心身全体の情報処理機能が独特の仕方で低下した状態にあることに関心と注意を払うべきである。
 ここに見られるのは、「頭が悪い」といった局所的な問題ではなく、「心身全体の情報処理のネットワークの連携が悪い状態」という大局的な問題なのである。言い換えると、心身全体の反射システムの作るネットワークが全面的に未成熟・未発達(もしくは萎縮ということもあるかもしれない)な状態である。5倍速読に達しない人ではそれが顕著なのであるが、この問題に普遍性があるのは、10倍突破できない人には、程度の差はあれ、同様の問題があるからなのだ。したがって、速読ができるようになる、ということは、そのようなネットワークの連携不全を改善することに他ならないのである。