第58回 「適応発展法(適応法)」

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【平成12年4月12日講義・収録】

「適応とは生物が自然環境に自らを合わせて生き残る出来事を言う。適応より弱い現象を順応と言う。
地球上の生物は形態的にも機能的にも驚くべき工夫を重ねながら、極限的な厳しい環境の隅々にまで浸透して生き延び、陸海空を繁殖の天国と化してきた。生命圏にはあっと驚く多様な適応のパターンがあり、数多くのブレイクスルー現象が実現している。そこからは多芸多彩な適応技術を学ぶことができる。進化の歴史も含めて適応の多くの実例を紹介したい。
生物の進化とは、遺伝子変化を用いて「適応を発明するプロセス」に他ならない。地球の生命圏は生きる戦略と適応の智恵との宝庫である。生命の適応の事実を知りその想像を絶した柔軟さと多彩な広がりに驚くことができれば、自分の適応の仕方にも新生面を切り開く意欲が落ちてくるだろう。
人間は身体環境と自然環境と社会環境に適応して生活をする存在である。適応法はこの三種の環境に新たな対処法を見出す技術である。そこで、環境を知り、環境を操作し、環境の隠れた可能性を読むことと、自分を知り、自分を操作し、自分の潜在的な可能性を読むこととの両方が大事である。それができれば環境と自分の両方の潜在的可能性の狭間で豊かに発展する主体的で創造的な適応のプロセスを楽しむことができる。
適応には、@短期適応と長期適応という時間の違い、A消極適応と積極適応という姿勢の違い、B惰性適応と創造適応という内容の違い、 C萎縮適応と発展適応という広がりの違い、D偶発適応と発見適応という知性の関与の違いがある。さらに、E柔軟適応と強靭適応という性質の違いもある。
思想がないと短期適応で終わり、意志が弱いと消極適応に甘んじ、情熱がないと惰性適応に陥り、見識が乏しいと萎縮適応にはまり、知性がないと偶発適応に頼るものだ。柔軟性と強靭性がなければそもそも適応は成立しない。一般の生命体は偶然の事象を通じて長い時間をかけて適応の道を見い出していくものであるが、人間は経験と知識と想像力を活かし、知性によってスピーディに適応の技術や戦略を見出すことができる。
斬新なアイデアを獲得し、豊かな夢を育て、体系的な思想を養い、情熱を維持しながら、意志を貫き、実践を通じて、充実した人生を展開していくための適応力の基礎を築こう。長期適応、積極適応、創造適応、柔軟適応、強靭適応、発展適応、発見適応を楽しみながら究めていくための能力を磨こう。」


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