雑誌「THE 21」取材記事(2004年5月1日号)

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「THE 21 5月号特別増刊号」PHP研究所、
2004年5月1日号、「速読力が10倍高まるSRSトレーニング」、78−80頁から。
   注意:以下の内容の図も含めた詳細は原文をご参照ください。
      本記事の内容の詳細を知りたい方は、
      「栗田式 仕事力を10倍高める速読トレーニング」PHP研究所
   栗田昌裕著
を参照してください。

タイトル:
「分散入力→並列処理→統合出力」をマスターしよう!
「本が10倍速く読める」トレーニングのすすめ

■従来の「音の読書」を「光の読書」に変革

 「もっと本が速く読めたらいいのに」
 そう感じたことはないだろうか。少なくとも、資格試験の勉強で、たくさんの本を読まなければならない人なら、一度はそんな思いを抱いたことがあるだろう。
 こうしたことから、巷には「速読法」に関する本が氾濫している。しかし、どれもその効果が疑わしいものばかりだ。
 一方、私が開発した「スーパー・リーディング・システム(以下、SRS速読法)」は、着実に成果を挙げている。事実、一九九七年九月から二〇〇一年一月までに、SRS速読法の講習を毎週一回ずつ十週間にわたって受講した六百一人のうち、講習の最終回に十倍速度を突破した人は五百八十七人(約九八%)にも及んだ。
 誌面の都合上、実際の講習内容をすべて紹介することは不可能なので、ここではSRS速読法の基本的な考え方と訓練法を知ってもらうことを主眼としたい。

           ※
 そもそも、速読とはどの程度の速さで本を読むことなのだろうか。
 SRS速読法では、読書の方式を「かたつむり読書」「尺取り虫読書」「面の読書」「蝶の読書」の四つに分けている(それぞれの解釈については、図1を参照)。
 さらにこれら四方式のうち、前半の二方式を「音の読書」と総称している。これは、表面意識を用いて中心視野から情報を読み取る毎分五千字以下の遅い読書であり、「一行読みをする」という古いパラダイムにとらわれているのが特徴だ。
 一方、後半の二方式は「光の読書」である。これは、潜在意識と周辺視野を活用して、多行読みをする毎分五千字以上の高速読書であり、めざすべき速読法である。実際の訓練では、音の回路を用いる従来の「音の読書」を、心身の総合的な訓練をとおして、最高度に加速し、「光の読書」への変革を生むことをめざす。
 では次に、SRS速読法の概略を説明しよう。読書をはじめとするあらゆる知的な情報処理には、「入力→処理→出力」という一連の働きがある。ここで、「入力」とは情報を入れること(=読むこと)、「処理」とは情報を独自の仕方で捉えること(=理解すること)、「出力」とは捉えた結果に基づいて反応すること(=活用すること)である。SRS速読法では、その一連の働きを「分散入力→並列処理→統合出力」という新しい方式に進化させることで、情報処理能力を加速させる。
 分散入力とは、簡単にいえば、大きな視野で、情報を一気に丸ごと読み取る作業をいう。また、並列処理とは、そうして入れた大量の情報を心の複数の場を用いて一瞬のうちに理解する作業を指す。そして最後に統合出力とは、それらを必要に応じて自由に活用していく作業だ。
 SRS速読法では、「分散入力→並列処理→統合出力」をマスターすべく、図2のような訓練を行なう。本稿では、「分散入力」をマスターするための訓練に絞って紹介しよう。これは「目づくりの訓練」といわれるものだ。実際のSRS速読法の体系では、この訓練だけでも十倍突破が可能である。なお、どの訓練も、繰り返し行なうことを心がけてほしい。

訓練@:初速度を測定する
 まず、速読の進歩を測る物差しとして必要な初速度を測定しよう。
 試しに本誌84ページの文章を決して急いだり、あせったり、見栄を張ったりしないようにして、従来の読書の仕方そのままで、正確に一分間かけて読んでみてほしい。初速度は読んだ行数に十八字をかければ得られる。読み終わったら、どこまで読んだかがあとになってもわかるように、目印をつけておこう。しばらくの期間をかけて訓練したあとに、振り返って同じ文章を読んでみると、進歩を自覚できるはずだ。
 初速度は、読む文章によっても当然異なるので、実際の講習では、ステップごとに同じ文章で初速度を測定するようになっている。
 通常のクラスの初速度の平均は、八百字から九百字のあいだである。

訓練A:「確」の目で文字をみる
 初速度がわかったら、「入力」を改善する訓練を早速、始めよう。速読の訓練の第一歩は、「物事をきちんとみる目」をつくること。これが、分散入力に必要な眼力の基礎をつくることになる。
 そこでまず、図3の訓練にトライしてみてほしい。このときは、「きちんとみる」ことだけを訓練の眼目とする。また、そうした「目配り」を、「確実にみる」という意味で「確」の目と呼ぶ。
 文字を追いかけているうちに、どこをみているかわからなくなるようでは心もとない。実際、十五%くらいの人が、途中でどこをみているかわからなくなる。これは入力の能力が弱いため。入力がきちんとなされないようでは、それから先の処理も行われるわけがない。たんに速く本を読む練習をするだけでは、『わかる速読』にならないのはそのためだ。

訓練B:訓練を一つするたびに速読を一回行なう
 訓練Aのように、情報処理システムを刺激するような訓練を何か一つしたら、その成果を活かすために、一分間の速読をすることを勧めたい。さもないと、せっかくレベルアップした働きがもとに戻ってしまうからである。最初の段階の速読訓練では、特別なことをしようと思わないで、「きちんとみながら速度を少し上げる」ことを心がけよう。もちろん、この段階では、「一行読み」でかまわない。
 「きちんとみる」ことと「速度を上げる」こととは、お互いに別の次元の出来事なので、この両者を相伴わせることが、最初の段階でもっとも重要なポイントとなる。このときに「音の回路」による理解にこだわらないことが次の重要なポイントである。読む対象は何でもよいが、ページ全体が見通しよくみえるものがよい。また、絵本のように字数が少ないものや、じっくり読んでもチンプンカンプンの本は、初期の訓練の対象としては不適当だ。なお、結果は必ず記録するようにする。

訓練C:眼球の動く速度を測定する。
 速読の訓練を始めたら、そもそも自分の眼球がどのくらいの速さで動くかを知っておくことが必要である。これは一行読みだけで、どの程度の速度までいけるかの限界を知ることができるからだ。
 具体的には、図4のような方法で計測する。これを「左右眼球運動の速度」という。同様に、右手の人差し指を上に、左手の人差し指を下にして、「上下眼球運動の速度」も測定しよう。この際、測定結果は必ず記録しておくこと。値は訓練とともに上昇するので、読書速度と同じく、初速度を確認しておくことが、のちのちの進歩の度合を判断するうえで重要だからである。
 多くのクラスでは、初回の眼球運動の速度は、平均で四十回から四十五回のあいだにある。初級では、それが訓練に応じて、左右も上下も五十回から約六十回にまで上昇していく。

訓練D:一m四方単位で景色をみる
 「確」の目と「速」の目の感覚がわかったら、今度は中心視野だけでなく、周辺視野でみる訓練を加えていく必要がある。
 その準備として、次の訓練を実践してほしい。これは周囲の景色をしっかり眺める方法の一つであるが、自分の周囲を一メートル四方の単位でみていくのである。たとえば、自分の部屋の周囲をそのつもりでよくみてみよう。床も壁も一メートル四方のネットをかけたと想像して、各ネットのあいだにあるものを、視線を動かさないで、二、三秒間凝視して捉え、次々と隣に目を移動させて、一分間で周囲の全部をみてみよう。
 このときに、普段意識しなかったものがみえたら喜んでいい。そして、見終えたら、目を閉じて、いまの全作業を振り返ってみる。このときに、みた景色がありありと、しかも連続的に想起できれば、「きちんとみる」という働きがしっかりしている証拠だ。逆に、連続的に想起できなければ、みる働きが「あやしい」状態であると思ってよい。
 このようにして、日常の風景をきちんとみるという体験を積み重ねることで、眼力(入力の力)を高めてほしい。この訓練を百回は繰り返そう。

訓練E:本を「大中小の目」で眺める
 風景の見方が洗練されてきたら、その眼力のセンスを実際に本のページをみることに応用してみよう。
 本を開いたらまず、ページの大きさを意識して眺める。この見方を「大の目」と呼ぶ。次に、段落のなす「形」を意識して眺めよう(読む必要はない)。このものの見方を「中の目」と呼ぶ。本を読むときにはいつでも、以上の「大の目」と「中の目」を意識してほしい。これをやっておくと、これから読む情報群が成す「地形」がわかるので、全体を「光の回路」に丸ごと残していくことがしやすくなる。
 読者の場合は、まだ「音の読書」の延長上にある段階なので、全体を丸ごと読み取れるわけではないが、ページの印象をあらかじめ得ておくことで、一行読みを加速させやすくなる。
 このような「大の目」と「中の目」とを発動させたうえで、さらに「小の目」(これは中心視野で眺める目)で、一行を素早く、停滞することなく読んでみよう。
 このときの「小の目」は、従来の音の読書の際に用いる目の使い方と大差はないが、大の目と中の目が同時に働いていると、一分間本を読んだあとでページ全体の記憶が残るようになる。

訓練F:指回し体操で読書速度をアップ
 SRS速読法の訓練体系は、じつは二重の流れにしたがって配置されている。
 第一の流れは、冒頭で紹介した「入力→処理→出力」をそれぞれ「分散入力→並列処理→統合出力」に変革する作業である。これに対して第二の流れは、「心身の六システム」(運動系、自律系、感情系、感覚・心象系、言語系、潜在系)を高める訓練を順次施行することだ。
 第二の流れの代表的な訓練法として、「指回し体操」がある。これは筆者が開発した画期的なノウハウであり、六つのシステムすべてに高度の刺激を与える。実際、指回し後には読書速度が平均二割上がることが確認されている。
 やり方は、図6を参照してほしい。大切なのは、訓練前に自分の指回しの能力を把握しておくこと。三十秒をかけて、親指から小指まで、それぞれ何回回るかを調べておこう。そのうえで、五本の指すべてについて、十回を一セットにして、数セットの練習を行なう。最低でも一週間はこの練習を毎日続けてほしい。

          ※
 ここまで読んで、「速読の訓練なのに、本をみたり、読んだりする訓練が少ない」と、不思議に感じた人もいるだろう。
 しかし、「音の読書」という迷路から脱出するには、「正面」からの攻略では不可能であり、「裏道」を見出す必要がある。つまり、「速読でない訓練(=裏道)をすることこそが、速読力を生む」のである。実際、SRS速読法の毎回の講習でも、速読をする時間は最大で六分しかない。
 このことを素直に受け入れ、虚心に訓練を続けられるかどうかが、「伸びる人」と「伸びない人」の分かれ道であることを最後につけ加えておこう。

■[図1]4種類の「読書の方式」
音の読書
表面意識で中心視野から読む毎分5,000字以下の遅い読書。1行読みが特徴。
  ○かたつむり読書
   毎分300字程度で、1字1字ゆっくりと読む読書。小学生の低学年程度。
  ○尺取り虫読書
   毎分1,000字程度で、1行ずつ分かち書きで読む。普通の成人の読書。

光の読書
潜在意識と周辺視野を活用して多行読みをする毎分5,000字以上の高速読書。
  ○面の読書
   2行以上ずつで、文字の配置を面的に捉えて読む。初級速読の方式。
  ○蝶の読書
   ページの広がりを空間のなかの出来事とみなして読む。上級速読。

■[図2]情報処理の3段階をいかに変革するか?
入力→分散入力 読書速度10倍
「目づくり」訓練により、大きな周辺視野を用いた素早い「まるごと入力」の力を獲得する。

処理→並列処理 読書速度50倍
「心づくり」訓練により、潜在意識を用いた見通しのよい効率的な並列処理を実現する。

出力→統合出力 読書速度70倍
「手づくり」訓練により、意識の場を一気に操作してインパクトのある情報出力を行なう。

■[図3]分散入力に必要な眼力をつくる訓練
訓練の方法
@1の数字を、右から左にかけて確実に1文字ずつ進みながらみる
A同様に、2、3、…9とそれぞれの数字を確実に1文字ずつみる
Bひととおりみたら、目を閉じて見え方を思い出す

■[図4]左右眼球運動の速度の測定法
測定方法
@両手の人差し指を前に出して左右に開き、互いに30cmの距離を開くようにする
A左右の人差し指の爪を、30秒かけて、何往復みることができるかを数える

■[図5]「大の目」と「中の目」
大の目 ページ全体の「形」を捉える
中の目 文字群のつくる「形」を捉える

■[図6]指回し体操
訓練方法
@各指の指先を合わせて、半球状(ドーム状)の形をつくる
A親指同士を触れ合わないように回す
B人差し指、中指、薬指、小指を同様に回す

◎30秒間に回る指回しの回数 



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