女優・小西真奈美さんとの対談

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速読することは、自分を変えること

 雑誌「ダヴィンチ」の企画によって、女優の小西真奈美さんと対談する機会があった。 ダヴィンチ誌に掲載されたその内容を採録する。

「速読することは、自分を変えること」
ダ・ヴィンチ2002年8月号対談完全収録版
発行・発売/メディアファクトリー 毎月6日全国書店にて発売中
SRS速読法は、連載「速読に挑戦」に協力しています
取材・構成――今屋理香

目次
8月号: 「速読することは、自分を変えること」
1 ◆◆◆ 読むのが遅いあなたへ
2 ◆◆◆ 本の情報を自分自身に活かす速読の力
3 ◆◆◆ 仕事や勉強で「できる人」と「できない人」の読み方
4 ◆◆◆ 本を速く正確に読めば情報は全身の感覚へと広がっていく
9月号:
5 ◆◆◆ 本を速く正確に読めば情報は全身の感覚へと広がっていく
6 ◆◆◆ 速読は誰にでもできる

<速読することは、自分を変えること。>
「ダ・ヴィンチ」2002年8月号

いつのまにか、簡単で読みやすい本ばかりを手に取るようになってはいませんか?そういえば、自分のコミュニケーション下手や、人と同じ言葉遣い、ものの考え方が気になったことはありませんか?読書能力を再生し、自分だけの輝く知性を磨くために足りないものは何か、女優・小西真奈美さんとSRS速読法提唱者・栗田昌裕博士が考えます。

小西 真奈美
1978年生まれ。鹿児島県出身。女優。第45回ブルーリボン賞新人賞受賞。98年つかこうへい劇団にて女優デビュー後、舞台で数々のヒロインをつとめ、99年テレビドラマ初出演。主な出演作はNHK「ちゅらさん」、NTV「新・星の金貨」、TBS「HOTMAN」等。今年7月より公開予定の映画『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』にて重要な役どころに挑戦、ドラマでは「僕だけのマドンナ」でCXの月9に登場と、話題作での活躍が続く。

栗田 昌裕
1951年生まれ。東京大学理学部数学科卒、同大学院修士課程修了、同大医学部卒。米国カリフォルニア大学留学。医師、医学博士、薬学博士。薬物動態学、肝臓病学、医学統計・システム理論などの研究を進める一方、講演や執筆活動も行う。日本で最初に速読1級の検定試験合格後、速読を入口としたSRS(スーパー・リーディング・システム)能力開発法を提唱。世界伝統医学大会3回連続グランプリ受賞をはじめ、毎日21世紀賞、2001年提言賞等受賞も多数。

1 ◆◆◆ 読むのが遅いあなたへ

小西 ●先生、私は本を読むのが遅いんです。文字を読んでから浮かんでくるイメージがついてこないと、前へ進めなくて。言葉を理解しながらというよりは、イメージを感じながら読みたくて、そのためにじっくりと時間をかけているんですけど……。

栗田 ■一冊読むのにどのくらい時間をかけていらっしゃいますか。

小西 ●2日くらいはかけるでしょうか。一つの場所にじっくり腰を据えて読むパターンがほとんどです。おおまかなストーリーや、自分が感動したところを心に残すつもりで読んでいるので、面白いと思えた本は結構覚えているんですけど、自分に合うところが無かったり、読むのに退屈した本は、あとで人に説明しようにも、内容の記憶があいまいになっていて。がんばって読んだかいがないんです(笑)。

栗田 ■感性を磨くのに読書はとても有効だと思いますが、今まで以上に本の中身を感じ取りたいなら、大量の文章を速いスピードで読むことをお勧めしますよ。今の小西さんの読み方は、本そのものよりも、自分で変換したイメージを追いかけて楽しんでいらっしゃるようです。それだとやはり、時間がかかってしまう。

小西 ●確かに、忙しい時は困るんです。

栗田 ■そうですね。想像してイメージを作る作業は、朗読より時間がかかる。

小西 ●わかります。

栗田 ■子供の頃から学校で教わった読み方の中には、イメージを大切にしなさい、というものもあったかもしれませんね。しかし、私が速読の講習で約4万人の方々を指導してきてわかったことに、イメージ読書には誤読が多いというのがあるんですよ。

小西 ●そうなんですか、困ったな。

栗田 ■読書は作家とのコミュニケーション。作品のメッセージを受け取ってこそ、その本の趣旨を読み取れるものです。ところが、自分で作りだすイメージの世界に入り込んでしまったらどうでしょう。小西さんもおっしゃいましたが、自分に接点の無い本をわかることが難しくなりますよね。これだと、読書がワンパターンになり、知らない世界にぶつかって開く知性や感性の扉も開かず、新しい自分となかなか出会えないかもしれません。もちろん、頭の良さやIQの高さだけで本は読めませんしね。ベストセラーを読んで時代の空気を味わいたい、専門書を読んで知性を高めたい、好きなジャンルをとことん味わって感性を豊かにしたいなら、まずは本のメッセージをちゃんと受け取ることが大事なんですよ。

小西 ●本の中身を自分の方にねじ曲げて理解しないために、一気に全部頭に入れる読み方がいいわけですね。

栗田 ■そうなんです。後でちゃんとわかりたいからこそ、まずは一冊まるごとちゃんと読むんです。

2 ◆◆◆ 本の情報を自分自身に活かす速読の力

栗田 ■今までよりも速く、作者が伝えたかったことを全部つかまえて読もうというのが、速読なんですよ。

小西 ●確かに、時間がかかることで満足に読めないことって多いです。でも、速く読んでしまって、中身はちゃんと残るんでしょうか?

栗田 ■うん、心配になりますよね。ところが、面白いデータがあるんですよ。今まで普通の読み方をしてこられた方に、一分間読書してもらって、どんなことが書いてあったか、そのままを書き出してみていただくと、一分間に一ページは読んでいたはずなのに、数行の文章が書き出せればいい方で、ほとんどの人が10個程度の単語しか再現できないんです。

小西 ●読んだはずのことが、実は頭にはほとんど残っていなかったということですか?自分のイメージがじゃまするせいかな?

栗田 ■そうなんですね。普通に読みながらその場で理解しようとすると、無意識に新しく入ってくる本の言葉やメッセージを捨ててしまって、自分の持ちあわせているイメージや知識に変換して頭に入れてしまおうとするんです。でも、速度をあげて読むとどうなると思いますか。

小西 ●自分のイメージにじゃまされない?

栗田 ■そう。自分の頭がイメージを作りだすより先に文章をどんどん入れてしまうことさえできれば、何が書いてあったかというときに、読んだそのままを再現できるようになるんです。

小西 ●速読なら、自分のパターンに翻訳するんじゃなく、本が伝えようとしていることをそのまま受け取れるようになるわけですね。

栗田 ■その作業に慣れていくと、自分の知らないメッセージをどんどん受け入れようという意識の土台が作られていきますよ。読書の楽しみは、実はここからなんです。

3 ◆◆◆ 仕事や勉強で「できる人」と「できない人」の読み方

栗田 ■小西さん、情報処理こそ、すべての能力の要なんですよ。速読はそのための訓練になるんです。情報をすばやく大量に受け入れる方法が身につくと、それが土台となって、頭の使い方や時間の使い方が変わってくる。

小西 ●頭がいい人というと、勉強ができる人、知識のある人などが連想されますが……。

栗田 ■いろいろなことに気が付く人や、正しい状況判断ができる人、人の気持ちがわかる人などはどうですか。ほかにも、臨機応変に柔軟な対応ができる人、ユーモアのある人など、その側面は実に豊かでしょう。人の知性や行動力を助けるのは、情報処理のスピードと質です。限られた場所と時間で必要な情報を頭に入れて間違わない行動をとる。対象が本でなくても、すべて速読の応用だと思いませんか?

小西 ●本当ですね。でも、私にも速読はできるでしょうか。

栗田 ■情報に価値を持たせる場面は日常にいくらでもありますから、まずは、速読なんて私に関係ないと思わないこと。例えば小西さんが仕事で初対面の人にインタビューすることになったとしましょう。それが明日に迫ったというとき、その人に関する本が、数冊手付かずで机に置かれていたままだったらどうしますか。

小西 ●今のペースだったら全部読むのに何日もかかるから……。

栗田 ■飛ばし読みして大事なところを見落とすこともあるかもしれませんよね。そういうときに、速読なら数十分もあれば全部ぱらぱらと頭に入りますから、取りあえず読んで出かけるんです。すると、移動の車の中で、または実際にお会いした人の顔を見たときに、小西さんの頭の中に入った事前情報が、聞くべき質問を浮かび上がらせてくれることに気付くはずです。

小西 ●確かに、毎日の生活はそんな情報処理の繰り返しですよね。

栗田 ■仕事や勉強で与えられたチャンスを活かしたいというとき、正確な情報をどれだけふんだんに使いこなせるか。情報を読む時間と同じくらい、あるいはそれ以上に、情報を使う時間の充実は大切ですよ。速読で情報処理の基本の型が身につけば、頭の中の自由度が増すと思ってください。

4 ◆◆◆ 本を速く正確に読めば情報は全身の感覚へと広がっていく

栗田 ■速読の入口は、自分の目で見える情報をちゃんとつかまえることから始まります。人間には目の前に広がる無数の情報をちゃんと見て処理する能力が備わっているのに、今の普通の読み方は、音読や黙読に合わせて一文字ずつしか目で拾っていないんです。

小西 ●本を読んで目が疲れたり肩が凝るというのも、そのせいでしょうか。先生、目に自然な読み方を教えていただけますか。


<速読が身につく。表現も身につく。>
「ダ・ヴィンチ」2002年9月号

この頃、簡単で読みやすい本ばかりを手に取るようになってはいませんか?
そういえば、自分のコミュニケーション下手や、
人と同じ言葉遣い、ものの考え方が気になったことはありませんか?
読書能力を再生し、自分だけの輝く知性を磨くために足りないものは何か、
女優・小西真奈美さんとSRS速読法提唱者・栗田昌裕博士が考えます。

5 ◆◆◆ 本を速く正確に読めば情報は全身の感覚へと広がっていく

栗田 ■速読の入り口は、自分の目で見える情報をちゃんとつかまえることから始まります。人間には目の前に広がる無数の情報をちゃんと見て処理する能力が備わっているのに、今の普通の読み方は、音読や黙読に合わせて一文字ずつしか目で拾っていないんです。

小西 ●本を読んで目が疲れたり肩が凝るというのも、そのせいでしょうか。先生、目に自然な読み方を教えていただけますか。

栗田 ■普通の音読や黙読は、作家が本に凝縮した一つの大きなメッセージを、文字という記号にしたがって、ばらして読むということになるでしょうか。一字ずつ声に出しながら頭に入れて、数日経ってやっと全部入れ終えてから、ああ、こういう本だったか、と思うわけですね。何日も読書だけしているわけではありませんから、その作業の途中で、味わいや理解が中断されたり曲解されたりしてしまいます。

小西 ●途中で食事した、眠った、そういったことでもそれまでに読んだことを忘れてしまいますよね。

栗田 ■声に出して読むというプロセスを踏んでしまうからそうなるわけで、「見てわかる」というプロセスだけで読めばいいんです。それが目にもやさしく、頭にも無駄なく届く。読んだことを映像で想像してみたり、暗記したりするのはとりあえず速読で全部頭に入れてから、と思ってください。

小西 ●そうか、見てわかる段階なら風景を見て瞬時に全てを理解するのと同じですよね。これまでは、読書には時間がかかるという思い込みがあったから、ついわかりながら読もうとしてきましたけど、速読ならすぐに一冊読めるから、ほかのことに気を取られずにラクに頭に入れられるようになりますね。

栗田 ■速読でくり返し読めば、脳が活性化します。すると、全身の感覚が余すところなく鍛え上げられていくようになる。例えば、今まで読書に使われることのなかった潜在意識も呼び起こされて働くようになるんです。潜在意識は人間のあらゆる意識の働きを支えている面がありますから、これまでに足りなかったものを補う力が自然に発揮されてくる。暗記の正確さが高まったり、いざというときのとっさの行動がスムーズに出てきたり、新鮮な感情の動きなどを自然に味わえるようになったり。

小西 ●イメージ能力や表現能力も豊かにできますか?

栗田 ■もちろんです。五感のすべてを用いて情報をとらえ、その体験を操作して物事を理解し、記憶し、行動に役立てていく力は、表現者である小西さんをはじめ、夢や目標をもって自己実現したい人に不可欠ですよね。本を正しく読めば、言葉という材料からイメージが生まれ、全身の感覚に広がり、スムーズな表現力につながっていくんですよ。そんな、自分の中に備わっている感覚と、本のメッセージとが連動する感覚を味わいながら速読を楽しんでいただきたいですね。逆に、速読でなければできないことですから。

6 ◆◆◆ 速読は誰にでもできる

小西 ●読む速さ、頭の働き、体の反応を連動して加速するのが速読、と思っていいんでしょうか。

栗田 ■うん、そうですね。自分の持ち物をばらばらにゆっくり働かせるより、一気に一緒に働かせる情報処理のプロセス。また、そのほうが簡単でもありますしね。

小西 ●私にも速読はできるんでしょうか。

栗田 ■例えば、小西さんが一本の台本を覚えるのに3日かけていたとしましょう。それを3時間に、いやひょっとしたら1時間に短縮してくれるのが速読です。端から見ていれば今までと同じように読んでいるようにしか見えませんが、内面でいろんな働きが総動員されている。私が提唱しているSRS速読法では、そんな人間の能力を6つの領域に分けてまんべんなくトレーニングしているんです。それぞれ、手足を動かす運動系、内臓の働きである自律系、感情や情緒をつくる感情系、感覚やイメージをコントロールする心象系、言葉を使う言語系、すべての土台となる潜在系。普通の読書では言葉を頭に入れるための言語系だけが極端に頑張ってる状態だと思ってください。一つだけを酷使せずに、みんなで一気にバランスよく働いてもらうわけです。

小西 ●そうすると、今までできないと思っていたことができるようになったりする。

栗田 ■SRSのトレーニングはその繰り返しですね。速読しながら、新しくここが変わった、これができた、その積み重ねで結果的に大きな変化を自分のものにする。最初の一歩は今まで1ページしか読めなかったのが2ページになった、それでいいんです。そこから10ページ、100ページになっていくのは簡単です。

小西 ●何もしないといつまでも1ページ。

栗田 ■6領域のためのトレーニングをきめ細かく用意していますが、これまで動かしてこなかったところを、速く器用に動かすための運動系の訓練や、自律系のための呼吸法など、体から直接アプローチするトレーニングで元気度の上がる方もたくさんいらっしゃいますよ。知性は頭だけのものではありません。いろんなアプローチで知性を引き出す方法を平素から自分で意識して使えるようになるだけでも、毎日の充実度が違ってくるはずですよ。速読で、頭と体の全てに漲る知性の鍛え方を実感していただきたいと思います。

 
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