1■突然変異を起こす遺伝子が動いている
  ・・・イネの突然変異遺伝子
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 03年に、イネの中で、遺伝子が場所を移動して動いていることが実際に確認された。
 (これは、染色体上を移動し、突然変異などを起こす「動く遺伝子」の一種がイネにあ
り、実際に動いていることが発見されたというもの(03年01月09日のネイチャー)。
 動く遺伝子の中でも塩基配列が短いMITEの一種で、mPingと名付けられたもの。
 MITEは人その他多くの生物にあるが、実際に染色体上を動く証拠はなかったため、
化石遺伝子と見なされていた。しかし、日米のチームが、mPingが、ふだんある場所
から抜け出して移動することを確認した。また、米粒が細い突然変異イネで、この突然変
異にmPingが関係していることが突き止められた。mPingを使うことで、遺伝子の
機構解明や品種改良に役立つことが期待される)。
 このインパクトは大きい。
 というのは、もともと生命は、親から子に正確に遺伝子が複製されて伝わることが本来
の仕組みであると考えられて来た。
 その仕組みが逸脱した結果として、突然変異が生じ、そこで多様性が生まれ、環境によ
って淘汰され、進化が生ずる、と漠然と考えられて来た。
 ところが、実際の動植物を見ていると、突然変異を起こしやすいものがあることが知ら
れている。たとえば、ツバキ。原種はヤブツバキであるが、育てていると、いろいろに変
異した個体ができる。それを園芸家は選んで、価値があると思われるものを選択して育て
て、園芸種として確立して来た。そのために、ツバキは江戸時代には1000種くらいの
品種があったとも言われている。
 このような種類は、見方によっては、遺伝子が複製エラーを起こしやすい、と考えられ
がちだが、そうではなく、「積極的に複製エラーを起こす戦略を採用している」ととらえ
ると、従来とは違った価値観が生まれて来るのだ。
 生命体の環境は絶えず変動しているので、生命体の方で、積極的に複製のエラーを
起こして、少しずつ変異のある子孫を作るようにしておくと、その中で生き残る者の確率が
上がることが期待される。
地球上には50万種を超える植物があり、数百万種を超える動物がいるとされるが、そ
のような多様性が生まれて来た背景に、積極的に突然変異を起こす遺伝子の役割が
想定できるのかもしれない。
 遺伝の仕組みの中に、ランダムネスを意図的に活用しながら、次世代を生み出すしかけ
があることが分かると、生命の戦略を理解する奥行きは途方もなく広がる。
 このような遺伝子の役割のさらなる解明が期待される。  
                       (栗田昌裕、050709記)

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