15■ヤツメウナギ:魚より古く誕生し吸血行動を選択した捕食戦略
   (050724)
   ・・・2億年前からの吸血生物ヤツメウナギは
     顎のない不思議な生命体
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 ヤツメウナギは、両目のほかに、鰓が左右に7対並んでいる様子が八対の目があるよう
に見えるところから名前がついた。
 ウナギという名前を持っているが、ウナギの仲間ではなく、魚類でもない。
 魚類よりも古い時代の2億年から地球上にいる無顎口上綱頭甲綱ヤツメウナギ目ヤツメ
ウナギ科の脊椎動物である。顎がないのが特徴で、円口類とか無顎類とも呼ばれる。
 丸い口を開けると、内部に円周上にたくさんの鋭い歯が並んでいる。その様子は不気味
で迫力がある。
 この丸い口で大きな魚に吸い付いて、血液を吸ったり、肉をかじったりする。
 日本にいるヤツメウナギは4種で、世界には40種のヤツメウナギがいるという。
 通常ヤツメウナギと呼ばれるのは、カワヤツメと呼ばれる種である。
 北海道にはカワヤツメ、スナヤツメ、シベリアヤツメがいる。
 サケと同様に、産卵のために川を上るので、定置網で漁をして取ることが行われている。
 漁が行われるのは日本海側の河川が主で、たとえば、石狩川では、平成9年には年間6
トン余の漁獲量だった。
 ヤツメウナギは、ビタミンAが魚類に比べると非常に多く含まれている。蒲焼きにした
り、干物にして食べるというが、私はまだ食べたことはない。ビタミンAは「目によい」。
このことと、「ヤツメ(八つも目がある)」こととがどこかで連想でつながって、「ヤツメ
ウナギは鳥目や目の不調によい」と民間では信じられている可能性があるようだ。
 産卵をするときには、吸盤で石を吸い上げて運び、産卵場所を作る。すなわち、口を「手」
のように用いて、体全体で引きずって運ぶのである。これもすごいことだ。
 産卵のために川に上ってくる成体の中には、産卵まで全く何も食べないでいるものと岩
などに張り付いて、藻などを食べるものとがあるという。
 もしかしたら、吸血機能のもとは、単に岩に吸いついて体を固定する仕組みから発達し
たのかもしれない、などと個人的な想像が広がったりする。
 幼生はアンモシーテスと呼び、うなぎに似たひも状の生き物だが、目もなく鰓孔もない。
 10数センチに育つと変態して目と鰓ができる。変態するところが魚と全く違うところ
だ。
 目が出来て後、2年間川底で生活し、茶色から銀色に変色したところで海に移動する。
 大西洋にはウミヤツメと呼ばれる種類が生息し、これが川を上って北米の五大湖まで移
動している。
 以前はナイアガラの滝でさえぎられて、そこから上には行かなかったのだが、1990
年の工事によって、迂回路が出来て、そこから上の湖水にまでなわばりを拡大したのであ
る。もちろん、工事をする際には、ヤツメウナギの大繁殖が起きるとは予想もしなかった
のだろう。
 特にヒューロン湖ではウミヤツメが大繁殖したために、マスなどの養魚場が被害を受け
て、困っているという。幼生だけを殺す薬剤TFNを散布して駆逐を試みているが効果は
少ない。幼生を殺す際には、湖底に電流を流して、その刺激で湖底の泥から泳ぎ出して来
た幼生に薬剤の溶液を流すのである。その薬剤は他の魚には影響を与えないものだという。
 年間約2万5000匹ものオスを去勢して放流することも行われている。この手法は害
虫などを根絶する際によく用いられる方法だ。
 ウナギは、産卵を海で行い、海で育った稚魚が川を上ってくる。
 それに対して、ヤツメウナギは、産卵を川で行い、稚魚が川で育つ。
 ウナギとヤツメウナギは生活史が逆になっているのも興味深い。
 一見ウナギに似るが、しかし、全く由来の異なる古代生物ヤツメウナギの不思議な生き
ざまを感じ取ってほしい。注目すべきポイントは、
@顎がなく、歯が円周上に並んでいること。
A目のない幼生が存在し、変態すること。
B口が吸盤状に発達して、「血液を吸う」という特殊戦略を採用していること。
C魚類よりも由来の古い生命体であること。
Dそれなのに、魚類を生きる糧にしていること。  
  Eサケのように、海と川を往復して生活をしていること。
 特に、Bで挙げたように、「他の生物を食べる」のではなく、「栄養を含んだ体液を吸
う」というのは、生きる戦略としては大きな発見的適応と言えるのではないだろうか。
 進化の道筋でそのような戦略がヤツメウナギ以外のいくつかの生物でも発見され採用さ
れているのは極めて興味深い。

 【参考記事】 ●「全人会ニュース 第407号」、2002年6月11日号、
進化法(25)生命法(236)拡大法(35)適応法(85)環境法(161)戦略法(9)柔軟法(389)旅行法
(272)能力法(34)[21]ガラパゴスフィンチが吸血行動を開始して新たに進化しつつある 9
                    (栗田昌裕。050724記)

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