14■タコクラゲ:他生物を体内に飼うことで繁殖する共生戦略(050723)
   ・・・パラオのマリンレイクのタコクラゲは
     植物プランクトン(藻類)を体内で飼って適応した
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 パラオ(PALAU)という島には、ジェリーフィッシュレイクという不思議な湖がある。
 そもそもパラオは火山島であるが、島全体が上昇するときに、海をそっくり抱き込んで
上昇した。そのために、マリンレイクという70以上もの塩水湖が島の内部に出来た。
 ジェリーフィッシュレイクはそのうちの一つで、他と隔絶された湖である。
 ジェリーフィッシュ(jellyfish)は、日本語ではタコクラゲと呼ばれるクラゲの仲間で
ある(学名はMastigias papua)。傘の直径は大きさは8〜20cm。
 生物学的には他のクラゲと同様に、「刺胞生物」の仲間である。
 日本では、関東以南の海域で、夏から秋にかけて見ることができるという。
沖縄、台湾から、パラオ、インドやマレー半島の方にもいる。
 名前の通り、タコに少し似た外見を持っている。傘は半球状で、褐色の地色に、うす茶
色の水玉模様がある。タコの足を連想させるような8本の附属器がついている(詳しくは、
口腕というものが8本あり、その上部(=上腕)はなめらか、下部(=下腕)には、小触
手や附属器がついている。下腕の一部は棒のように長く出ている。
 傘のふちを強く動かして、拍動し、絶えず動き回っているので、水族館で展示されるこ
とが少なくない。
 タコクラゲの薄茶色の部分(=水玉模様の部分)には、藻類が共生していて、これが光
合成をして酸素と栄養をタコクラゲに与えているという。逆にその栄養を代謝して出来た
排泄物が、藻類の栄養になっているのである。
 藻類には光が必要なので、タコクラゲを飼育するためには光がいる。
 さて、上述のパラオのタコクラゲは、外界と隔絶された環境の中で、独自の進化を遂げ
たものと考えられている。
 もともとのタコクラゲは、小魚などをとらえて口に持っていくための触手を持っている。
しかし、外界から取り残されて、魚のいない湖水で生活することになったタコクラゲは、
進化して、触手が退化してしまった。そして、体内の固有の藻類が十分な光合成をしてく
れるので、タコクラゲは、太陽の光だけで生きていくことができるようになった。
 つまり、餌がなくとも、生きていける動物になったのだ。これはすごい。
 共生によって活路が生じた例として印象に入れておこう。
 パラオのジェリーフィッシュレイクはそのようなタコクラゲが大繁殖している不思議な
世界である。そこはいわばタコクラゲの楽園なのである。
 付記1: クラゲは進化の歴史から見ると、大変に古い時代に生まれた原始的な動物だ。
具体的には、5.9億年ほど前のカンブリア紀には「カンブリア爆発」として
知られる生命進化が爆発的に生じて、さまざまな生命種が誕生した出来事があっ
た(カンブリア紀は古生代の一番最初の時代である)。
クラゲはそれよりも以前から地球上に生存する種類なのである。
 付記2: 多くの多細胞生物は、口と肛門が別になっており、食べたものは、口から肛
門にいたる管状の構造を持っている。しかし、クラゲは、口から入ったものが、
口からまた出るという原始的な構造しかない。口が排泄の場所でもあるのだ。
 付記3: タコクラゲはペットショップでも売っている。口腕がなく、さまざまな色彩
のものが売られているという。紫外線の当て方で、藻類の繁殖が異なり、色が変
化するという。パラオのものが売られているのではないかと思われる。
 付記4: タコクラゲは、受精した後に、
プラヌラ(雌の口椀で成長)→ポリプ(岩に付着してコロニー形成)
→ストラビラ(頭が拍動)→エフィア(遊泳)→メタフィラ→成体
と多段階で形態や生態を変えながら、成長する。
  つくづく生き物というものは不思議なものだと思う。
付記5: タコクラゲは、沖縄、台湾から、パラオ、インドやマレー半島の方にもいる。
 付記6: タコクラゲには、消化循環系があり、中央胃腔から、多くの放射管を出し、
各放射管が互いに連絡して網状になっている。
口腕部及び棒状付属器には消化循環系がよく発達している。
                    (栗田昌裕。050723記)

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