13■グルニオン:潮汐を活用して卵と幼魚を守る時間戦略(050722)
   ・・・大潮の夜に砂浜に産みつけられたグルニオンの卵は
      次の大潮が来た瞬間にふ化をする
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 アメリカのカリフォルニア南岸の海に生育するグルニオンというトウゴロウイワシ科の
魚がいる。ボラに似ており、体長は約20cm。背中は薄緑色で、体のわきにはシルバ
ーブルーの線が入っている。
 早春から初夏にかけて、ロサンジェルスの海岸の砂浜に産卵にやってくる。特に、ロサ
ンジェルスの南部にあるサンペドロのカブリロビーチが有名だ。
 満月か新月から3〜4日後の満潮の夜に、波に乗って砂浜に上がり、一斉に産卵を行う。
 その様子がすごい。200mほどの距離にわたって、5mほどの幅で、たくさんのグルニオ
ンが大騒ぎで産卵のイベントを繰り広げる。
 メスが体を立てて尾びれで砂に穴を掘り、オレンジ色で直径2mm以下の卵を産みつけ
ると、オスがメスに巻き付いて精液をかけて受精を行う。親たちは飛び跳ねながら海に戻
る。
 それから約2週間後の満月か新月の夜、再度満潮の波が砂浜に押し寄せると、その
潮に浸されて卵は一気にふ化をして、海に泳ぎだしていく。
 この出来事は、時間までも正確に予測できるので、「グルニオン予報」が出されて、観光
客が集まってくる。私も留学中にその情報に接して興味を持ったことがある。
 潮汐変化という自然のリズムを巧みに活用して、他の魚に卵を食べられないようにする
この仕組みは、進化と適応の不思議な一例と言える。
 どのようにして、このような習性が獲得されたのか、そのプロセスを想像するのは知的
なパズルと言えるだろう。
 興味深いことは、砂の中の卵は、ふ化の時期になっても、海水につからなければふ化を
しないということだ。逆に、時期が来ていれば、海水に浸すと、2〜3分でふ化をするという。
何と面白い性質だろう。
 砂漠に生息するトリオプスの卵が、雨が降って水がたまると、一挙にふ化してくることを
連想する。「シーモンキー」(ブライアンシュリンプの一種か)の卵に水を入れるとすぐに
ふ化することも連想される。
 しかし、どのようにして大潮をキャッチするのか、というその判断の仕方(すなわち、情報
処理の仕組み)に興味が持たれる。
サンペドロのカブリロ海洋水族館(CABRILLO MARINE AQUARIUM)では、グルニオンの
詳しい情報が得られる。
                    (栗田昌裕。050722記)

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