44■アカテガニ: 大潮の満月を利用する幼生放出戦略(050902)
  ・・・大潮の満月の夜に集団で河口に移動して
     何万頭もの幼生を放出する
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 アカテガニ(Chiromantes haematocheir)はイワガニ科アカテガニ属のカニで、秋田県や
岩手県以南で九州までの河口域に分布する。沖縄諸島にもいるが個体数は少ないという。
 ふだんは水を好まないで、陸上の山林に住んでいる。
 冬場の温度の低い期間は、斜面などに穴を掘って冬眠をする。
 初夏になると、次第に河口近くの海岸に集まってくる。
 そして、大潮のとき(満月、または新月の時期)の満潮になる日没近くになると、突然、
卵を抱えたカニは、水際に大集団をなして移動し、暗くなると水中に入り、その直前に卵
から孵った幼生を放出する。
 移動の際には、多くの個体で道路が埋め尽くされる地域もある。
 幼生を放出する際には、体を震わせて行うので、水面にさざ波状の波紋が立って、その
様子は神秘的だという。
 卵の直径は約0.5mm。放出される幼生は「ゾエア」と呼ばれる段階で、しばらくすると、
脱皮して「メガロバ」と呼ぶ約2mmほどの幼生になり、脱皮を繰り返して1ヶ月もすると、
体長が3mmほどの子ガニになり、その後は、陸上生活をする。
 1回に放出される幼生は4、5万個体もあり、3年にわたって、毎夏に3回ほど放出を
する。
 しかし、成長して親になるのはそのうちのごくわずかしかない(1〜2匹)。
 というのは、生んだそのときから、ボラの幼魚に食べられてしまったりするからだ。
 幼生放出の時期には、各地で放仔観察会(放仔=ホウシと読む)が催されている。
 たとえば、神奈川県三浦半島の小網代アカテガニ観察会、徳島県海部郡由岐町のアカテ
ガニの自然産卵”観察会など。
 どうして、このようなことをするのであろうか。
 もともとカニは海の中に住んでいたが、アカテガニの場合は、次第に陸上生活に適応す
るようになった。しかし、まだ完全には海から離れることができず、産卵のときには、海に
戻らざるを得ない段階にあると考えられる。
                    (栗田昌裕。050902記)

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